私の婚約者には好きな人がいる
騒ぎになりそうなことを察した惟月さんはその場から、離れて部屋に戻ると、帰り支度をさせた。

「マンションは一度も来ていないから、安心だが、念のため、俺が帰るまでは誰もいれないように」

「はい」

「静代さんに頼んで一緒にいてもらうようにしたから、静代さんと待っていてくれ。俺は後始末してから帰る」

「中井さんにあまりひどいことはなさらないで」

「それは約束できない」

さあ、と促すように背中を押され、駐車場までいくと運転手さんが待っていて、有無を言わさず車に乗せた。
今まで見たことがないくらいに惟月さんは怖い顔をしていたせいで、私は何も言えなかった。
< 112 / 253 >

この作品をシェア

pagetop