私の婚約者には好きな人がいる
結彩の計画通りにことは進み、咲妃がいるであろう場所の住所を手に入れた。
そして、俺に言った。

「惟月はカッコ悪くなったわね」

「はあ!?」

「昔はクールでそんな必死な姿、見せたことなかったわ」

「うるさい」

計画のためとは言え、馬鹿にされると分かっていながら、高辻社長と恭士さんにも電話をかけた。
まだ居場所がわからないと思わせるための時間稼ぎをしたかったからだ。

「おかげで、すっきり諦められそう」

結彩はそう言って、ひらひらと手を振り、去っていった。

「カッコ悪いか」

手にした住所のメモに視線を落とした。
これが、カッコ悪いというなら、それでいい。
車に乗り、咲妃がいるであろう場所へ向かった。
この手に取り戻すために。
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