私の婚約者には好きな人がいる
御曹司はまだ恋を知らない【番外編 恭士】

家政婦

家政婦―――それは私の天職だと思っていた。
契約によってさまざまな家事をこなしてきた。
お客様の評判も上々。
そして、契約が終わり、次の契約の話が来た。

「所長。新しい派遣先ですか?」

「そう。桑江(くわえ)さん、今のところが終わったばかりでしょう?」

「はい」

契約先のご家族が海外に転勤が決まったので、契約終了となったばかりだった。
四月だから、そういう人も結構いるんじゃないだろうか。

「ちょうど欠員ができたのよ」

そう言って、所長が見せたのは大口契約を交わしている高辻(たかつじ)財閥の本宅だった。

「うわっ…すごいところじゃないですか。まさか、私に?こんなところ無理ですよー!」

「桑江さんは優秀だから、私は務まると思うの」

「えー!照れますね」

えへっと笑って見せた。

「高校を卒業してから、ずっとウチで働いてくれているっていうのもあるし、信頼しているのよ」

私の名前は桑江(くわえ)夏乃子(かのこ)
高校を卒業してから、ずっと宮竹(みやたけ)家政婦紹介所で働いている。
(うち)が貧乏だから、働くしか選択肢はなかった。
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