私の婚約者には好きな人がいる

２３歳になるけれど、五年間、失敗もしながら、なんとか続けてこれた。
それも所長や周りのベテラン家政婦さん達のフォローあってことで、最初のうちは失敗ばかりだったことは言うまでもない。

「欠員って誰が辞めたんですか？」

「辞めたわけじゃないの。高辻様からのご要望で別宅に異動されただけ」

「別宅！？」

つまり、本宅とは別に住んでいる家があるってこと。

「そこはお客様の個人情報だから、言えないの。ごめんなさいね」

「い、いえ」

その言葉ですべてを察した。
そうよね。高辻財閥くらいになると、本妻だけじゃないか……。
半端ないお金持ちだもんね。

「長年、高辻家専属で私の母の時代から働いて頂いている静代(しずよ)さんはお歳だったしね。高辻様も大きなお屋敷で働かせるよりは小さな別宅をお任せしたのじゃないかしら」

「静代さんって、超ベテラン家政婦じゃないですか！」