私の婚約者には好きな人がいる

高辻のお屋敷


天下の高辻グループのお屋敷は閑静(かんせい)な高級住宅地の中でも一際(ひときわ)大きいお屋敷で小高い丘の天辺(てっぺん)にあった。
高辻はお金持ちというだけじゃなく、歴史も古く、結婚相手は公家(くげ)武家(ぶけ)のお姫様が(とつ)いだとか。
門扉(もんぴ)だけでも、圧倒されてしまう。
私は裏門に回った。
表だけでなく、裏の勝手口にも鉄格子のような門があり、インターホンを鳴らすと警備員のおじさんが出てきて、中にいれてくれた。

「ああ。新しい家政婦さんですね。宮竹(みやたけ)さんから、聞いていますよ。ちょうど奥様がご在宅ですので、リビングまで案内させてもらいますね」

警備員のおじさんは丁寧な口調で案内してくれた。

「すみませんが、案内はここまでで。奥様は警備の者が頻繁(ひんぱん)に顔を見せることがお嫌いでして」

「わかりました」
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