私の婚約者には好きな人がいる
リビング手前の廊下で警備員は去っていった。
気難しい奥様なのかな。
顔を出すなって、なかなか厳しいじゃないの。

「失礼します」

ノックして、リビングのドアを開けるとそこには怜悧(れいり)な瞳をした眼鏡をかけた若い男の人と凄みのある綺麗な女の人がキスをしていた。

「えっ!?」

男の人は私に気づき、鋭い目で睨み付けた。
わ、悪いのは私じゃない!そう言いたいのに声がでなかった。
動けずに固まっていると、男の人は顔色一つ変えずにキスを終わらせ、言い捨てた。

「これで満足したか?」

恭士(きょうじ)様っ、私っ」

体にすがりつく女の人を冷ややかに見下ろして言った。

「悪いが、なんとも思えなかった。で、どうするんだ?まだ付き合うか?」

顔を赤くし、泣き出すのではと思っていたけど、泣かずに唇を噛み、顔を伏せてリビングから飛び出して行った。
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