私の婚約者には好きな人がいる

初日


「今まで、(おもて)を取り仕切っていたのは長くお勤めされていた静代(しずよ)さんだからね。私達は裏向きしかしてこなかったから、困っているのよ」

「そうよ。あんなベテランがいなくなると、どうしていいか、正直わからないわよねぇ」

私だって、裏向きがいいけど。
同じ宮竹(みやたけ)家政婦紹介所から派遣されている豊子(とよこ)さんと祥枝(さちえ)さんが言った。
年齢は五十代前半で二人もベテランなのだが、やっぱり静代さんには敵わない。
紹介所の名前が入った青いエプロンをして、夕食の準備にとりかかった。
キャベツを茹でながら、ふときいてみた。

「あの、私ってガキ臭いですか?」

「え?そうね。髪をわけて三つ編みを二つしていると、幼く見えるわね」

「そうですか。恭士(きょうじ)さんに高校生と間違えられてしまって」

「確かにそうかも。童顔だから、よけいにね」

やっぱり。
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