私の婚約者には好きな人がいる
「よくおわかりになりましたね」

「ああ」

「お食事はどうされますか?」

「着替えてから、食べる」

「はい」

キッチンに戻り、食事を温めた。
奥様がまるで帰らないことがわかっていたみたいだったけど。
もしかして、頻繁(ひんぱん)にあることなの?
恭士さんがダイニングに来る前にサラダとワイン、バケットを用意し、椅子に座るのを見て、ロールキャベツとサヤエンドウの炒め物を出した。
一瞬、恭士さんが渋い顔をするのを見逃さなかった。

「お嫌いな物がありましたか?」

「いや、ない」

嘘だ、と思った。
野菜が苦手らしく、特に生野菜を食べる時、眉間に皺を寄せた。
無理しているはずなのにそれを見せずに食べきり、ワインを飲んでいた。

「母さんは帰ってきてもこの時間なら、食事を済ませてくる。片付けていいぞ」

「はい」

片付けながら、余ったものは冷凍保存して、私達の賄いにしようと決めた。
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