私の婚約者には好きな人がいる
落ちたサラダ
「おはようございます。奥様」
奥様は朝は卵料理を一品とサラダ、フルーツ、トーストとコーヒーときいており、用意してある。
挨拶はなかったものの、穏やかに微笑まれ、私も微笑み返した。
少し遅れて恭士さんが入ってきた。
「おはようございます。恭士さん」
「夏乃子か……。おはよう」
朝が苦手らしく、気だるげに恭士さんは挨拶を返してきた。
私が用意したサラダを出勤してきた二人がキッチンから運んできた。
「奥様、サラダです」
豊子さんが奥様の真横に皿を置くのを私は見ていた。
奥様の視線が皿に注がれ、ハッとした。
マットの上に皿を置かないと―――思った矢先、奥様の腕がわずかに動き、奥様に背を向けた豊子さんの背中に向かって皿がぶつかり、ガシャンと皿が割れる音と背中に張り付いた野菜がパラパラと床に落ちて行った。
今のは―――なに?