私の婚約者には好きな人がいる
豊子さんも祥枝さんも青ざめた顔で言った。
私は冷蔵庫からリンゴとほうれん草、ヨーグルトとハチミツを取り出し、ジューサーにかけ、氷の入ったコップに注ぎ、それをトレイにのせた。

「これでいいわ」

ダイニングに戻り、奥様の前にサラダを出し、恭士さんの方には野菜ジュースとミネラルウォータ
ー、オムレツとトーストを出した。

「恭士さんは生野菜がお嫌いのようでしたので、こちらをご用意させていただきました」

「野菜ジュースか……」

「見た目は緑色ですけど、リンゴの味が強いので飲みやすいと思いますよ」

そう言うと、恭士さんは野菜ジュースを飲んだ。

「うまい」

「よかったです」

とりあえず、切り抜けられたようでホッとした。

「まあ、恭士さんが野菜ジュースを飲むなんて、珍しいこと」

奥様はにこにこと微笑みながら、そう言ったけど、私はさっき起きた事を目にしたせいで、その微笑みが(うす)ら寒く感じていた。


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