私の婚約者には好きな人がいる
落ちつかない様子でいると、恭士さんが気づいたのか、聞いてきた。

「どうかしたか」

「えっ!?え、えーと。こんな車に乗るの初めてだし、服も高校生の延長みたいで、こんな格好で乗ってよかったのかと。高級レストランに間違えて入った時の気持ちというか、なんというか」

「なんだ、そんなこと考えていたのか」

笑われた。
くっ。いいよ、笑いたければ笑えばっ!

「夏乃子は可笑しいな」

「笑わせるつもりはありません」

悔しそうに言うと、また笑った。
銀行に到着し、車から降りた。

「ありがとうこざいました」

一応、お礼は言った。

「いや、いい」

ぺこりと頭を下げた。
なんとなく、お礼を言うような気分にはなれなかったことは伏せておいた。
お金を無事、振り込むと銀行の外に出た。
送ってもらったおかげでバス代が浮いたし、ここはちょっと贅沢してカフェでお茶とか飲もうかな。
お休みのウキウキ気分で心が大きくなっていた。
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