私の婚約者には好きな人がいる
お嬢様みたいなスーツまで買い、本当にいつ着るの?これ。と思いながらも楽しそうにしている恭士さんに水を差すことができず、結局なにも言えなかった。
美容院に連れていくと、緩くてふんわりしたウェーブの髪に顔にお化粧までされ、お土産に化粧品を紙袋にいれてくれた。

「ちゃんとお手入れしないとだめよ」

と、注意付きで。
恭士さんは仕上がりを満足そうに眺めていた。
そして、お昼は高そうなフレンチレストランに入ると、入り口にいた案内係の男の人が驚き、すぐにオーナーが走ってきた。

「高辻様!急なお越しで」

「予約もせずに悪いな」

「いいえ。どうぞ」

そう言って、個室に通された。
高そうな絵やシャンデリア、真っ白なテーブルクロス、窓からは西洋風の庭が見えて、部屋は静かでゆったりとくつろげるようになっていた。
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