私の婚約者には好きな人がいる
まあ、あれだけイケメンだから、私もドキドキしないといえば、嘘になるけど。
恭士さんと私なんて、住む世界が違いすぎて現実味がない。

「奥様、お客様が参りました」

豊子(とよこ)さんが奥様を呼びに来ると、玄関の方からすでにお喋りの声が聞こえてきた。

「あら、お早いこと。皆さん、張り切っているわねぇ」

くすくすと奥様は楽し気に笑った。

「お茶とお菓子の用意をして参ります」

キッチンでは豊子さんと祥枝(さちえ)さんが待機していた。

「お茶会のセッティングはできたの?」

「はい。バッチリです」

「若い子がいてよかったわ。私達にお茶会の用意なんて、ねぇ?」

「会社の研修にあったじゃないですか」

無言になった。
二人とも出なかったんだ。
ワゴンにティースタンドをのせ、サンドイッチやスコーン、カップケーキ。
外注だから、盛り付けるだけ。
それはありがたいけど、お茶会なんて初めてだから緊張する。
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