私の婚約者には好きな人がいる
豊子さん達はお嬢様達の前に出たくないって言うし。
私だって、同じだよ……。
サンルームに行くと、奥様達やお嬢様達はおしゃべりで盛り上がっていた。

「失礼します」

ワゴンからティースタンドとお茶のポットをおろし、一人ずつカップに注いでいく。
気づくと、肝心の恭士さんがいない。

「夏乃子さん、恭士さんをお呼びして。お部屋で休んでいるでしょうから」

「はい」

二階にあがり、恭士さんの部屋をノックした。

「奥様がお呼びです」

返事がない。

「あの、恭士さん?」

ドアをそっと開けると、カーテンを閉めたまま、暗い部屋で椅子に座り、険しい顔をして黙っていた。

「いるんじゃないですか。お茶会が始まってますよ」

聞こえてるよね?
ひょいっと顔を覗き込むと、驚いた顔した。

「どうしたんですか?具合いが悪いんですか?」

「いや」

気乗りしないのが、目に見えてわかる。
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