私の婚約者には好きな人がいる
お嬢様達は恭士さんに話しかけるのに忙しそうだった。

「恭士様は長期のお休みはとられないのですか?」

「よろしかったら、カナダの別荘にご招待しますわ」

「私の家は島を所有していますの。ご一緒しません?」

本当にお金持ちなんだなぁ。
お嬢様達はお洒落でお化粧もしっかりしていて、高そうな服を着ていた。
まるで、色とりどりの花のよう。
こんな世界があるんだ。

「ご招待して頂けるからには高辻よりも立派な別荘なんでしょうね?」

お嬢様達はハッとして、黙り込んだ。

「期待していますよ」

「…い、いえ」

「そ、それは、その」

本当に手厳しい。
行きたくないって言えばいいのに相手が誘いにくいように話をもっていくなんて。

「恭士さんは少し気難しい所があるけれど、遠慮なさらず、誘って差しあげて。自分からはなかなか女性と出かけたりしないから、困っているの」

奥様の言葉にお嬢様達は顔を見合わせた。
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