私の婚約者には好きな人がいる
「でも、恭士様が最近、女性をお食事にお連れしているって評判なんですよ」

「毎回、同じ女性と聞いて、わたくし達、気になっていますの」

「どなたですの？」

奥様達も興味津々で食いついてきた。

「まあ。恭士様が珍しいこと」

「とても素晴らしい女性なんでしょうね」

へぇー。誰なんだろう、と思いながらお嬢様達の話を聞いていた。

「自分のプライベートを話す気はありません」

恭士さんは知らん顔をして、お茶を飲んだ。
踏み込まれないように恭士さんは線を引き、お嬢様達はなにも聞けずに戸惑っていた。
何も話さない恭士さんに奥様達やお嬢様達は不服に思っての事なのか、笑顔が消えた。
それでも、当たり障りない会話をしようと奥様が懸命に話しかけていた。

「恭士さんのお仕事の相手でしょう」

そう言ったけれど、場の空気が戻ることはなかった。

「ケーキを皿にのせてくださる？」

「はい」
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