私の婚約者には好きな人がいる

機嫌の悪いお嬢様達は私を呼びつけ、スコーンをとらせたり、お茶を注がせたり、と地味な嫌がらせを始めた。

「サンドイッチが遠いわ」

「お取りしますね」

横に立つと、それを見計らったように足を思い切り踏んづけられた。

「…っ！」

顔を顰(しか)めるとお嬢様は薄らと笑みを浮かべていた。
痛みに耐え、皿にサンドイッチをとり、置いた。

「私にもいれてくださるかしら」

「は、はい」

慌てて、次のお嬢様の隣に行き、サンドイッチの皿を受け取ると足を蹴られた。
見えないところなので、誰も気づいていないのか、注意しない。
なんで…？
さっきまでは穏やかに話していたのに。
恭士さんへの不満を私に吐き出しているようだった。
足が痛い。

「皿をさげてちょうだい」

「はい…」

痛みに耐えて、歩き、皿を下げようと腕を伸ばすと、誰からも見えないように思いっきりつねられ、皿を落としてしまった。

「も、申し訳ありません」