私の婚約者には好きな人がいる
「夏乃子さん、何をしているの」
なにも気づいていない奥様は呆れた顔で言った。
割れた破片を集めようとすると、その腕を掴まれた。

「夏乃子、手を切ったらどうする。危ないだろう」

「あ、そ、そうですよね」

この中で唯一、気にかけてくれたのは恭士さんだけで、思わず、泣き出しそうになってしまった。
突然、恭士さんが体をひょいっと抱きかかえた。

「皿の破片で手を切ったようなので、失礼します」

切ってない!と思ったけど、恭士さんは素早くサンルームから出た。
出る瞬間に見えた奥様達やお嬢様達は呆然として、言葉を失い、誰も恭士さんを止めることはできなかった―――

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