私の婚約者には好きな人がいる
足元の恭士さんから上目遣いで見上げられると、色っぽくて胸がドキドキした。

「あ、あの、手を」

ふ、と恭士さんが笑った。
な、なに?

戸惑う私を無視して、恭士さんは赤くなった足のつま先に口づけた。

「ひゃっ…」

唇が優しくつま先から蹴られた箇所までなぞる。
それだけなのに触れられた肌が粟立ち、おかしな気分になってくる。
気づくと、恭士さんの端正な顔立ちが目の前にあり、私は頭の中で『なんて綺麗な顔なんだろう』と思っているうちに唇を受け入れてしまっていた。

「あ……だっ……」

止めないとと思っているのに口腔内を舌がなぞり、舌を絡めとられ、何も言えなかった。
私にとって、初めてのキスで、どうしていいかわからず、ただされるがままで、何度も角度を変えてキスを交わされ、うまく呼吸ができずに息を乱した。

「あっ…は……」

唇を離されると、熱が引き、思考が戻ってきた。
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