私の婚約者には好きな人がいる
ひょいっとサンルームを覗くと、真っ白なテーブルクロスやソファーカバーは紅茶がかけられて茶色くなり、床にはケーキやスコーンがぶちまけられて、踏まれた後が残っている。

「ひどい……」

二人は溜息を吐いた。

「よくあるのよ。ここまでひどいのは初めて見たけれどね」

「奥様はうまくいかなかった時にヒステリーを起こされるから」

「……そ、そうなんですか」

二人はなれているとはいえ、さすがにここまでの惨状を目にしたことはないらしく、戸惑いながらも片付けた。
さすがにテーブルクロスやカバーは元には戻らず、ごみ袋にいれて捨てるしかなかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


奥様は部屋に閉じこもったまま、夕食の時間になっても出てこなかった。
恭士さんは静かに食事をし、食べ終わると黙って部屋に戻って行った。
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