私の婚約者には好きな人がいる

いつもに増して、高辻の家の中は静かで不気味に感じたのはお茶会の後の滅茶苦茶になったサンルームを見てしまったからだと思う。
後片付けを終えて、部屋に戻り、報告書を書いているとドアをノックする音がした。
奥様かもしれない。
お腹が空いたのかもと思いながら、ドアを開けると、恭士さんがいた。
反射的にドアを閉めようとすると、足をドアの間に挟み、それを阻んでくる。
ヤクザなの？と思いながら、恭士さんを見ると、不機嫌そうにドアを蹴って開けた。
その慣れた足さばきに育ちの良さは皆無だった。
部屋に入り、ドアを後ろ手で閉める。

「は、入ってこないでください！」

「別に何もしない」

「そんなこと言って！騙されませんよ。私の中では危険人物扱いですからね！」

なにされるか、わかったものではない。

「嫌そうではなかったけどな」

「油断していただけです」

顔に見惚れていました、とは言えなかった。

「確かめにきた」