私の婚約者には好きな人がいる
「何をですか?」

「顔を見たら、はっきりすると思ったんだが。そうでもないな」

「……なんか、腹が立つんですけどっ!」

今、すごく馬鹿にされたような気がした。

「あの時は気づいたら触れていた」

「セクハラですよ」

「そうだな」

「二度としないでくださいね」

まったく、もう。

「それは―――嫌だな」

「はあ!?」

「なるほど。俺はお前が好きらしい」

突然の告白に私は頭がおかしくなったんじゃないかと、恭士さんの額に手をあてた。
熱はないみたいだ。

「なにしているんだ」

「いえ、熱でもあるのかと思って」

「ない。今、自分でも言って納得したところだ」

そうか、と恭士さんは頷いていた。
そして、すんなり部屋から出て行った。
何が起きたの?そう思っているのはきっと私だけじゃない。
恭士さんも同じように思っているかもしれなかった―――



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