私の婚約者には好きな人がいる
素知らぬ顔で目を逸らして、テーブルから離れようとすると、向こうから話しかけてきた。

「ねえ、家政婦さん?恭士様とは仲がよろしいの?」

「悪くはないと思います」

「そう。お茶会の時も思ったけれど、恭士様になれなれしいと思うのだけど」

そういうこと―――と、納得した。
恭士さんに相手にされず、面白くないのだろう。
生まれた時から望んだものを手に入れることができた人達は諦めるということがなかっただろから、きっと私を排除したいに違いない。

「家政婦さんはどこの大学をお出になったの?」

「いえ。大学は出ておりません」

「まさか、高卒?」

「お金がなかったから、高校を卒業して働いているの?」

「はい」

「はい、ですって」

くすくすと綺麗なお嬢様達は笑った

「笑われるようなことではないと思いますけど」

「なんですって?」
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