私の婚約者には好きな人がいる
「自分でお金を稼いだことがありますか?私は自分の力でお金を稼いで弟や妹を養っているんです。それを恥ずかしいと思ったことはありません」

きっぱりと言い切るとお嬢様達は顔を歪ませた。

「なんて生意気な家政婦なの」

「口の利き方が悪いわね」

何とでも言ってなさいよ!と思っていると、シャンパングラスを手にした一人が優雅に微笑んで言った。

「貧乏で可哀想。こんな高級品飲んだことないでしょ。私の口にしたものだけど、どうぞ」

そう言い終わるが早いか、ばしゃっと顔にシャンパンがかけられ、何が起きたのか、一瞬、理解できなかった。
シャンパンが毛先から、ぽたぽたと滴った。

「どう?美味しかった?」

笑い声が響いた。

「やだ、汚いわ」

「綺麗にしたほうがいいわよ」

「本当ね。頭も冷やした方がよろしいのじゃなくて?」
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