私の婚約者には好きな人がいる
はっとして、逃げようとしたのを何本もの手が体を掴み、どんっと体が突き飛ばされ、プールに落ちたのが分かった。
大きな水しぶきがあがり、冷たい水が皮膚を刺す。
水を含んだ服は重たくて、スカートが足が絡まり、うまく泳ぐことはできず、水の冷たさが手足を痺れさせた。

「たすけっ…てっ!」

むせながら、何度か顔を出して息をするのを大笑いしながら、お嬢様達は見ていた。
なんで、こんな目に―――

「あなた達っ……!何をしているのっ!誰かっ―――!!」

甲高い女性の声にお嬢様達が息を呑んだのがわかった。
その声に駆けつけてきた誰かが、水の中に飛び込む音がした。
けれど、誰が助けてくれたのかまではわからなかった。
意識が遠のき、ただ深く暗闇に落ちて行った。
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