私の婚約者には好きな人がいる
ダイニングのドアが開き、旦那様と黒服を着たボディガード達が入ってきた。
これは悲鳴をあげるのも無理はない。
どこから、どう見てもマフィアのボスみたいだ。
その迫力ある旦那様に恭士さんは身動(みじろ)ぎもせず、悠然(ゆうぜん)とした態度で眺めていた。

「父さん。早いですね。おはようございます」

「恭士。やりすぎだ」

「なんのことです」

ふっと恭士さんが微笑みを浮かべた。

「わかっているだろう」

旦那様は新聞をばさっとリビングのテーブルに投げた。
そこには倒産とか、高辻グループが買収とか、大きく書いてある。

「これだけじゃないだろう。悪評を流して、マスコミを使って追い詰めたな?」

「さあ。なんのことか」

「とぼけるな」

「俺がやったという証拠でもあるんですか?」

ないらしく、旦那様の顔が険しくなった。
再び、玄関の方が騒がしくなり、インターホンが鳴り響いた。

「困ります!」
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