私の婚約者には好きな人がいる
唇が重なり、いつもなら、割ってはいる舌が首から鎖骨に降りていく。
キスで終わりのはずなのに手が体をなで、服の裾から胸へと伸びて手の平が胸を下から持ち上げるようになでた。
肌を直接触られると、ぞくりとして脚が震えた。

「だ、だめ!」

「俺が嫌か?」

耳に息がかかり、崩れ落ちそうになるのを必死で堪えた。

「そ、そうじゃなくてっ、あっ、やあ」

耳たぶを甘く噛まれ、舌で舐められ、声をあげてしまい、恥ずかしさのあまり、泣きたくなった。

「本当にやめてください!」

懸命に体を離し、恭士さんに言った。

「私は家政婦ですから、こんなことしちゃだめなんです!」

「俺のことは嫌いか?」

首を横に振った。
嫌いなわけがない。
でも―――

「なら問題はない」

「あります!」

「なんだ?」

「私と恭士さんじゃ、釣り合いません。旦那様も奥様も反対されます」

「そんなことか。別に反対されても気にしないが」
< 222 / 253 >

この作品をシェア

pagetop