私の婚約者には好きな人がいる
白い帽子も素敵だった。

「まさか、その服装で行くの?」

「えっ…はい」

ブラウスにスカートだけど。
駄目なのかな。
そんなに悪くないとは思うけど……

「もしかして、スーツのほうがいいですか?」

「ええ。その方がいいわ」

恭士さんから、スーツを買ってもらったのがクローゼットにある。
使う機会もないのにと思っていたけど、まるで、こうなることを見越(みこ)していたかのような恭士さんの采配(さいはい)に驚く。
着替えてくると、奥様がまだでかけずに待っていた。
そして、私をじっーと見た。

「待ってちょうだい。お化粧は?」

「しました」

奥様はえ?と驚いて、私の顔を二度見した。
失礼な。
何回見ても変わりませんって。

「いくら若いからってファンデーションだけはだめよ!」

「そんなものですか」

祥枝(さちえ)さん。夏乃子さんにお化粧をして差し上げて」

「上手ですね」

感心していると、祥枝さんが言った。

「会社でメイクの研修もあったでしょう?」

「苦手で……」

「そういう問題じゃありません」

「すみません」
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