私の婚約者には好きな人がいる
ガーデンパーティーの時より、自分が場違いだと思い知らされている気がして、なんだか悲しかった。
あの時より、気になるのは……たぶん。
私が恭士さんのことを好きになってしまったから。
軽い気持ちで終われないくらいに。
社長室のドアをノックすると、綺麗な女の人が出てきた。

「桑江さんですね。社長がお待ちです」

「は、はい」

社長室は広くて、高そうな皮のソファーや絵画、大きな机がどんっと窓ガラスの前に陣取っていて、その中央に王様が座っていた―――王様はここまでやってきた私を(さげ)すんだ目で見ていた。

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