私の婚約者には好きな人がいる

「そうです……」

恭士さんは求人雑誌を手にした。
付箋が貼ってあるところをパラパラとめくっていた。

「ホステス！？」

「ちょっ！それは冗談なんです！冗談！」

恭士さんは腹立だしげに求人雑誌をゴミ箱に力いっぱい投げつけた。
勢いあまって、ごみ箱が倒れてしまった。

「何するんですか！」

「行くぞ」

「えっ！？」

体を抱えられ、部屋から出た。

「降ろしてください！」

「断る」

廊下にはスーツ姿の男の人が数人いた。

「夏乃子(かのこ)の荷物をマンションに届けて置け。それから、例の計画を実行する」

男の人達は頷いて、何か連絡を取り始めた。

「あの人たちはいったい……」

ヤクザに転職したわけじゃないわよね？と思いながら、恭士さんを見た。

「秘書だ」

「秘書って女の人じゃないんですか」

「ああ、会社に行ったから、わかるのか。女もいるな、確かに。だが、俺は俺で秘書を雇っている」