私の婚約者には好きな人がいる

逃がさない

マンションに着くと、セキュリティのためか、警備員が何人もいたのに誘拐されてきたような私の姿を目にしても何も言わなかった。
警備の意味ある!?と聞きたいくらいだった。

「助けを求めても無駄だぞ。このビルの持ち主は俺だからな」

「完全に誘拐犯のセリフですよ!」

私の言葉は完全に無視された。
ビルが持ち物って感覚がおかしい。
高級マンションに連れてこられると、その中を楽しむ余裕はなく、部屋に放り込まれ、鍵とチェーンをかけられた。

「これで、大丈夫だな」

大丈夫とは思えなかった。
一番危険な人間がそばにいるような気がしてならない。
じりじりと恭士(きょうじ)さんから、少しずつ離れた。

「それで逃げたつもりか?」

腕を掴み上げられて、床に押し倒された。

「ま、待ってください!私っ……っ!」

噛みつくようなキスに唇を塞がれた。
角度を変えて何度もキスをされて、逃げようとした顔を掴まれた。

「俺がどんな気持ちでいたと思う?」
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