私の婚約者には好きな人がいる

「誰が愛人になれと言った」

「え?」

「俺は欲しいものは絶対に手に入れる」

不敵に笑う。
私の髪に口づけた。

「困難であれば、なおいい」

「は……!?」

「だから、夏乃子。お前は俺のものだ。絶対に手放さない」

いいな?と耳元で囁かれた。

「……一緒にいてもいいんですか?」

「俺のそばにいろ。二度目は赦さない」

「はい」

まったく偉そうなんだから……そう思いながら、その体を抱きしめた。
一番怖いのは旦那様や周りじゃない。
恭士さんかもしれない―――そして、強いのも。
だから何があっても大丈夫なのだと。
そう思いながら、私はその腕に抱かれた。
< 245 / 253 >

この作品をシェア

pagetop