私の婚約者には好きな人がいる
「誰が愛人になれと言った」
「え?」
「俺は欲しいものは絶対に手に入れる」
不敵に笑う。
私の髪に口づけた。
「困難であれば、なおいい」
「は……!?」
「だから、夏乃子。お前は俺のものだ。絶対に手放さない」
いいな?と耳元で囁かれた。
「……一緒にいてもいいんですか?」
「俺のそばにいろ。二度目は赦さない」
「はい」
まったく偉そうなんだから……そう思いながら、その体を抱きしめた。
一番怖いのは旦那様や周りじゃない。
恭士さんかもしれない―――そして、強いのも。
だから何があっても大丈夫なのだと。
そう思いながら、私はその腕に抱かれた。