私の婚約者には好きな人がいる

社長の椅子


目が覚めると、ベッドの上で眠っていた。
恭士さんが帰ってきたのは夢ではなかったんだ、とぼんやりと思っていた。
しつこく抱かれ続けた体は痛んだけれど、なんとか起き上がり、パジャマ姿でリビングに行くと、恭士(きょうじ)さんがいた。

「目が覚めたか」

コーヒーを飲みながら、用意されたサンドイッチを差し出した。

「食べろ」

腕を掴み、隣に座らせた。

「ほら」

トートバッグの中にテディベアがいた。

「お土産、買ってくれたんですか」

「ああ。着いた初日にな。忘れたら、がっかりするだろうと思っていた」

恭士さんはなんとも言えない表情を浮かべていた。
買ったのに私はいなくなったと連絡があり、戻った時には姿は見えず、会った時には拒絶された。

「まだ怒ってますか?」

「ああ」

「ごめんなさい」

「謝るな。俺も悪かった。二度と傷つけはさせない」

顎を掴んで唇を奪う。
あ、朝から!?
しかも、昨晩散々、私を抱いたくせに。
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