私の婚約者には好きな人がいる
社長室にノックもしないで、入った。

「恭士。マナーがなってないぞ」

旦那様は優雅にお茶を飲みながら、新聞を読んでいた。
そして、恭士さんの隣にいる私を見ると、蔑むような視線を向けてきた。

「なんだ。まだわからないのか」

「それは父さんのほうですよ」

「なんだと?」

社長室に恭士さんの秘書達が入ってきた。

「取締役会で社長解任が決定されました」

「馬鹿な!私を裏切ったのか!」

ダンッと拳で机を叩いた。

「まあ、いい。持ち株がある」

恭士さんが手をあげた。
秘書のひとりが前に出て、紙を見せた。

「高辻の持ち株比率をご覧になりますか」

「これは」

絶句していた。
恭士さんの持ち株比率が7割、2割を旦那様が持っていた。

「母さんが1割、咲妃(さき)が1割、俺が3割、実の母親が2割のこりは取締役達が持っていた。俺が7割保有しているということは身内の株を手にした。そういうことだ」
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