私の婚約者には好きな人がいる
「高辻さん、仕事はいつまで続けるんですか?あ、変な意味じゃないですよ!?ただ、純粋にいつまでなのかと、いう意味で!」

「わかってます。まだ未定です」

「そうですか」

本当はもうやめようと思っていた。
このまま、清永(きよなが)商事に来ていれば、迷惑だろうし、二人の邪魔になる。
諦めたくはなかったけど―――私は親が婚約を決めてから、自分では何もしてこなかった。
形だけの婚約者だと思われていても不思議じゃない。
雑巾を洗っていると、他の人が出勤し始めた。

「閑井君。これ、やっておいて」

「えっ!でも、これ中井さんがまとめておいてくれって言われて引き受けていたじゃないですか」

「そうなんだけど、時間なくて。今、忙しいの。お願いね」

中井さんが閑井さんに仕事を渡していた。

「こ、これ、中井さんの分だけじゃないですよね。他の人のも……」

「ごめんね?閑井君」
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