私の婚約者には好きな人がいる
「これくらいできるでしょ」

「じゃあ、私の午後からの仕事はもう急ぎじゃないのばかりだから、コピーしたのをわけるわ」

中井さんは目を細めて、手伝いを申し出てくれた人を睨みつけた。

「これは高辻さんの仕事よ」

お弁当組は驚き、顔を見合わせた。

「できないなら、もうこないくていいわよ。雑用なんて誰でもできるから」

中井さんはそう言って、去っていった。
他のみんなは気まずそうにしていたけれど、私は明るく言った。

「私なら、大丈夫です。だいぶ、なれましたから」

私が中井さんの立場なら、いてほしくないに決まっている。
早く諦めてしまわないといけないと思っているのに惟月さんと話すことができるようになったせいか、なかなか、断ち切れずにいた―――
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