私の婚約者には好きな人がいる
「僕は目の前の仕事を今は頑張ります。気にしないで下さい」

ちら、と中井さんは私に一瞬、視線を向けた。

「高辻さんは周りに取り入るのが上手ね」

ふいっと顔を背けて、行ってしまった。

「すみません。僕のせいで、あんな嫌味を言われて」

「いいえ」

あんなことを言われたのは初めてだったから、驚いて何も言えなかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「中井さんの送別会ですか?」

お弁当組の人達が来て

「そうよ。高辻さんもくるわよね?今、人数確認していて」

「私は―――」

「こなくていいわよ」

中井さんがドサッと書類を大量に置いた。

「高辻さん、やることがたくさんあるでしょ?」

あからさまな嫌がらせに人数確認をしていた人が怒りだした。

「これ、他の課のまであるじゃない!」

「私の送別会に来たい人はここだけじゃないのよ。やってくれるわよね?」
< 42 / 253 >

この作品をシェア

pagetop