私の婚約者には好きな人がいる
「なにしているんだ」

「惟月さん!」

恭士(きょうじ)さんから、電話があった。仕事が終わらないから、帰らないと聞いたと」

惟月さんは元気がなかった。
恋人が遠くに行くんだから、当たり前よね。
それにしても恭士お兄様は過保護にもほどがある。
しかも、惟月さんに電話するなんて。

「これが終わったら、帰ります」

「一人でどうしてこんな大量に?」

「皆さん、送別会に参加したいとのことでしたし、お引き受けしました」

「お人好しにもほどがある」

呆れられてしまった。

「恭士お兄様には私から連絡します。兄が迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません」

「いや。これだとなかなか終わらないだろう?手伝おう」

「え!?」

「一人でやらせたら、恭士さんに殴られそうだからな」

惟月さんは笑っていたけど、私は笑えなかった。
お兄様なら、やりかねない。

「ほら」

惟月さんはまとめた書類を渡してくれた。
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