私の婚約者には好きな人がいる
「ありがとうございます。惟月さんはやっぱり優しい人ですね」
「俺が?優しくなんかないだろう」
「覚えてませんか。初めてお会いした日、突然、雨が降ってきて、まだ顔を合わせる前だったのに惟月さんは傘をさしてくださったんですよ」
「ああ。そういえば、着物の女性がいたな。雨に濡れると困ると思ったんだ。けれど、咲妃さんだとは知らなかった」
「知らない人に親切にできるのは優しいからですよ」
惟月さんは照れたように目をそらした。
「手を動かせ。終わらないだろう」
「はい」
惟月さんは長く細い繊細そうな指で綺麗に書類をまとめて、順番に渡してくれた。
二人でやると、早く終わり、運ぶのも惟月さんがやってくれた。
「ありがとうございました」
終わってしまったのが、ちょっと残念な気がした。
「終わったなら、帰るぞ」
「え?」
「送っていく」
「はい!」
嬉しくて、力強く返事をすると、惟月さんが笑った。
「疲れてないみたいだな」
疲れなんて、吹き飛んでしまっていた。
そして、今は仕事を任せてくれたことにすら、感謝したいくらいだった。
「俺が?優しくなんかないだろう」
「覚えてませんか。初めてお会いした日、突然、雨が降ってきて、まだ顔を合わせる前だったのに惟月さんは傘をさしてくださったんですよ」
「ああ。そういえば、着物の女性がいたな。雨に濡れると困ると思ったんだ。けれど、咲妃さんだとは知らなかった」
「知らない人に親切にできるのは優しいからですよ」
惟月さんは照れたように目をそらした。
「手を動かせ。終わらないだろう」
「はい」
惟月さんは長く細い繊細そうな指で綺麗に書類をまとめて、順番に渡してくれた。
二人でやると、早く終わり、運ぶのも惟月さんがやってくれた。
「ありがとうございました」
終わってしまったのが、ちょっと残念な気がした。
「終わったなら、帰るぞ」
「え?」
「送っていく」
「はい!」
嬉しくて、力強く返事をすると、惟月さんが笑った。
「疲れてないみたいだな」
疲れなんて、吹き飛んでしまっていた。
そして、今は仕事を任せてくれたことにすら、感謝したいくらいだった。