私の婚約者には好きな人がいる
「咲妃に不満があるなら、いいのよ。咲妃にはまた新しい相手を探すつもりだから」

惟月さんは考えていた。
きっと婚約を解消されるに違いない。
だって、惟月さんは中井さんのことが好きなんだから。
そう思っていたのに返ってきた言葉は思いもよらないものだった。

「このまま、進めてください」

驚いて惟月さんの顔を見たけれど、その表情からは何を考えているのか、まったく読み取れなかった。

「俺は反対だ」

「恭士。お前は誰でも反対だろう。惟月君。それを聞いて安心したよ」

「そう。それなら、いいのよ。咲妃と仲良くしてね」

両親はホッとしたようだったけど、恭士お兄様だけは冷ややな目で惟月さんを見ていた。

「惟月君。よかったら、夕飯を食べていきなさい」

「ありがとうございます」

ダイニングに案内されると、両親と和やかに話していた。

「さあさあ。夕飯を食べていって下さい」
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