私の婚約者には好きな人がいる
キッチンから静代さんが出てきて、用意してあった料理を並べてくれた。
嬉しかったのか、お父様はとっておきのワインをあけた。
静代さんはシチューやバゲット、サラダ、ローストビーフ、生ハムとチーズを運び、フルーツの盛り合わせを出してきた。

「シチュー、美味しいですね」

「そうでございますか。お嬢様もお料理はお上手でいらっしゃいますよ。お料理教室に通われていますからね。時々、手伝ってくださるんですよ」

「静代さんには敵わないわ」

「そりゃ、そうですよ。何年、お勤めさせて頂いていると思うんですか」

そう言うと、みんなが笑った。

「恭士も静代には敵わないからな」

お父様ですら、静代さんには頭があがらないところがある。
私は笑っていたけれど、内心では問い詰めたい気持ちでいっぱいだった。
中井さんはどうするの?
今なら、まだ断ることができたのによかったの?
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