私の婚約者には好きな人がいる
お見合いの後は惟月(いつき)さんがお正月や高辻(たかつじ)の家のパーティーにこられた時にお話をするくらいで、私から話しかけることは滅多になかった。
婚約をしているけど、惟月さんには気軽に話しかけづらい。

それは私が好きだからっていうだけじゃないと思う……
惟月さんはとても綺麗な顔をしているから。
日本人離れした色の白い肌と茶色のサラサラとした髪と瞳、立ち姿はすらりとして人形みたいでとても女性から人気があると友人達が言っていた。

「そんな方と婚約だなんて」

お父様が気に入って、清永のお家に話を持ち掛けたから実現したような婚約だった。
婚約が決まった時は夢みたいって思ったけれど、まだ結婚が決まらないということは私だけが浮かれているのかもしれない。
そう思うと胸が苦しくなる。
私は一目見た時から、心を奪われてしまったのだけど……
きっと惟月さんはきっと違うわね。
容姿だってすごく美人っていうわけでもないし。
私が持っている唯一の肩書は『高辻のお嬢様』だけ。
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