私の婚約者には好きな人がいる
「話がある」

「ああ」

なんの話なのかはお互いにわかっているみたいで、私には聞かれたくないのか、二人は部屋から出て行ってしまった。
お昼休みが終わり、戻ってきた惟月さんに変わった所はなく、淡々と仕事をしていた。

「咲妃さん」

「はい!」

「帰りは送るから、少し待っていてほしい」

まさかの言葉にすぐに返事が出てこなかった。
清永のおじ様に言われてのことかもしれない。
それでも、私は嬉しくて頷いた。

「はい。待ってます」

「ああ」

待っている間、机に置かれた仕事のファイルを見ているふりをして、仕事をしている惟月さんを見つめていた。
整った顔立ちに茶色の髪と瞳。
日本人離れをした容姿だった。
どれだけ見ていても飽きないくらい綺麗な顔をしている。
昔から、惟月さんはモテていた。
パーティーに行っても女の人が寄ってきていたけれど、その場では私に遠慮して女の人達は挨拶程度だった。
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