私の婚約者には好きな人がいる
恭士お兄様は静代さんに追い出されてしまった。

「まったく、恭士坊ちゃまには困りますねえ。ご自分の結婚相手のことを気にかけていればいいのに。恭士坊ちゃまのことは私に任せて下さい」

「ありがとう。静代さん」

作ったものを後は詰めるだけだったので、手早くお弁当箱に詰めて、保冷バッグに入れた。

「きっと喜んで下さいますよ」

「ええ」

そうだといいのだけれど。
静代さんは励ますようにぽんぽんと背中を叩いてくれた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「お弁当を?」

「はい。作って参りました。良かったら、ご一緒にと思いまして」

お昼休みになり、緊張気味に聞いてみると、惟月さんは驚いていた。

「大変だっただろう?」

「いえ。両親の教育方針で、日常生活に困らない程度の家事はこなせるよう、教育を受けておりますから、これくらい平気です。お茶をいれますね」
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