私の婚約者には好きな人がいる
熱い緑茶をいれ、持っていくと、惟月さんは来客用の広いテーブルにお弁当を広げ、皿や箸をすでに並べてくれてあった。
二人分―――それがなぜかとてもうれしかった。

「ぼんやりしてると、お茶をこぼすぞ」

惟月さんはひょい、と持っていたお盆を私の手から奪うと、テーブルに湯呑みを置いた。

「ほら」

腕を掴まれ、ソファーに座らせると惟月さんはきちんと手を合わせた。

「いただきます。食べないと昼休みが終わるぞ」

「は、はい!」

スライスアーモンドをパン粉に混ぜて揚げた香ばしいエビフライと静代さん直伝のだし巻き卵が好評でおいしいと言ってくれた。
ただトマトが苦手なようで渋い顔をしていたのが、おかしくて、それを見て笑うと子どものように恨めしい顔をし、無理やり口にいれて食べいた。

「いつもより、のんびりできた気がするな」

食後に熱い緑茶を飲みながら、惟月さんは言った。

「そうですか?」
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