私の婚約者には好きな人がいる
今日は惟月さんが取引先にでかけていて、お昼には帰ってくるけれど、ずっと一人だったので閑井さんがきてくれたのは嬉しかった。

「秘書の仕事がうまくいっているようで、安心しました」

心配してくれていたようだった。

「閑井さんのお仕事の方は順調なんですか?」

「はい。最近、プロジェクトを任されました」

照れくさそうに閑井さんは言った。

「すごいですね!」

「いやあ、全然ですよ」

閑井さんは謙遜していたけれど、すごく嬉しそうだった。
こほんと小さな咳払いが聞こえて、ドアの方を見ると、惟月さんがいた。

「せ、専務」

「閑井。仕事中だろ?書類を置いたら、(すみ)やかに部屋から出ていけ」

「すみません!」

閑井さんは慌てて、出ていった。
そんなふうに言わなくてもと思いながら、惟月さんの顔を見上げると、不機嫌そうな顔をしていた。

「仲がいいな」
< 67 / 253 >

この作品をシェア

pagetop