私の婚約者には好きな人がいる
「海外支店から連絡があった。繊維メーカーの特殊な繊維を海外の顧客に売り込んでいた件だが……」

「ああ。あれはもうほとんどが契約までいって、メーカーに発注も済んでいる」

「海外支店に異動したばかりの中井(なかい)がイベントで間違った説明をしたせいで、キャンセルが相次いでしまって、今、海外支店が大変なことになっているんだ」

「なんだって!?」

「だから、中井が落ち込んで―――」

「顧客には俺から直接連絡し、説明をする。間水!お前はなにをやっていたんだ」

間水さんはハッとして、頭を下げた。

「悪い」

「咲妃さん。顧客名簿を」

「は、はい!」

ファイルを取り出し、手渡すと惟月さんはキャンセルになった顧客先を調べ、書きだしていた。

「間水。お前は自分の繋がりのある所がいくつかあるだろう?そこから連絡して担当と話をしろ」

「ああ」

間水さんは電話をかけはじめた。
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