私の婚約者には好きな人がいる
「恭士坊ちゃま。旦那様が惟月様とお話しになられるんですから、こんなところで立ち話はいけませんよ」

静代さんに叱られると、渋々退いた。
リビングに入るとお父様とお母様が並んで座っていた。
怒ってはいないようだったけれど、真面目な顔をしている。

「惟月君。どうして呼ばれたかわかるね」

「もちろんです。高辻の力をお借りし、助けて頂きありがとうございました。損失はわずかで済みましたし、信頼も取り戻せました」

「そんな大したことはしていませんけど……」

「いや、高辻の名前を出すということはそういうことだ」

惟月さんは真剣な顔で言った。

「仕事のことは別にいい」

お父様は気にしていないようだった。

咲妃(さき)とのことだ。親として、ここできちんとけじめをつけ、どうするのか聞きたいと思っていた」

「もちろん。咲妃さんとは結婚させて頂きたいと思っています」

結婚―――!?
惟月さんを見ると、頷いた。
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