私の婚約者には好きな人がいる
「そうか。それでは婚約披露パーティーを開こう」

お父様は大喜びだった。
まさか、こんなことになるとは思わず、呆然としていると惟月さんが言った。

「どうして驚いているんだ。結婚するつもりだったんだろう?」

「そうですけど……。突然すぎて」

惟月さんはコンビニの時と同じように笑っていた。
だから―――私との結婚は嫌ではないとわかり、嬉しかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


婚約披露パーティーは盛大に行われた。
ホテルのホールを貸し切り、大勢の人を招待し、仕事関係者や友人、親戚、一通り挨拶に回るだけでも大変だった。
学生時代の友人達は会場に飾る花を習っていた生け花の先生と一緒に飾り付けてくれたり、ピアノやヴァイオリンや琴の演奏をして祝ってくれた。

「咲妃さん、おめでとう」

「ありがとう。とても嬉しいわ」

なかなか抜け出せず、困っていると恭士お兄様がやってきて、友人達に微笑んだ。
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