私の婚約者には好きな人がいる
「今日は咲妃の婚約祝いにきてくれて、ありがとう」

「恭士様!」

「お久しぶりです!」

恭士お兄様がくると、友人達の興味はお兄様に移ってくれた。
お兄様は女の人に人気だから……
やっと私は解放されて、ホッと息をついていると隣の恭士お兄様が耳うちした。

「咲妃。控え室に飲み物と軽食を用意してもらってある。少し休んできたらどうだ?」

「ええ。ありがとう。恭士お兄様」

会場から、そっと抜け出すと、近くの控え室に向かった。
惟月さんも休んでいるのか、部屋の灯りがついている。

「惟月が結婚するとは思わなかった」

「うるさい」

間水さんがからかうように惟月さんに言っていた。

「中井はいいのか?」

その名前を聞くと部屋に入れず、固まってしまった。
浮かれていたけれど、惟月さんの口から別れたとは聞いていない。

「ああ。海外支店に行くとあいつが決めた時にきっぱり別れた。もう終わった話だ」

「そうか。それなら、言わないほうがいいか」
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